飲食店をやってます。

美味いモノ作って売ってりゃ客は来るし儲かる。そんな時代はとっくにおわりました。お店を運営していく中で思っている事を書いています。たまに全然関係ない事も書きます。笑

「良い飲食店」ってどんな飲食店だろう。 (転載)



〜 他のブログに書いていたポストですが、ブログを統一するために転載しておきます 〜

FBでちょっと某ポストにコメントを書いたらちゃんと伝わらなかったので、自分の頭を整理する意味でもちょっと書いてみます。

※あくまでも飲食店に勤める人間としての考え方です。僕の純粋に「お客さん」としての感じ方はまた少し違うかとは思います。

僕たちの従事する業界を「飲食業」とか「接客業」とか言いますが、牛丼やさんからおばちゃんがやってるスナック。キャバクラもファーストフードも大手チェーン居酒屋も、カフェも学食も、果ては野球場も(免許的には)、全て飲食業です。

各飲食店の向かっているベクトルは全て異なります。

当然、それぞれがその目標に向かうための道筋も全て異なってきます。

がんこ親父が営むラーメン屋では、

店は古くて汚い。店内も決してキレイではない。喋りながらラーメン食ってると「喋ってないで食べろ!」なんて怒られたりして。

でも、有無を言わさずラーメンが旨い。

六本木のキャバクラ。

店内は豪華絢爛。ドレスをまとった女性が隣に座ってお酒を注ぎながら話し相手をしてくれる。

でも出てくるのはナッツやチョコ。

大手チェーンの牛丼屋。

店内はキレイ。とにかく安い。でも店内にスタッフは数人。ホールにはスタッフいない。

ファーストフード。

店内はとにかくキレイでスタッフはそつない接客。指導が行き届いてる。

でもお得意さんへの対応なんで基本的にはないし、出てくる商品は「まずまず」。

これらの様々な飲食店をひとくくりにして、ものを語るのはやっぱり違うわけです。

ラーメン屋のがんこ親父がタキシードを着ていないのはダメな事ですか?

キャバクラで出てくる食べ物は有無を言わさず旨い、手の込んだものじゃないとダメですか?

牛丼チェーンにもホールスタッフを配置し、「この牛丼は玉子を割ってよく混ぜ、真ん中にくぼみを付けて流し込みよく混ぜてお召し上がり下さい」って言わせた方が良いですか?

ファーストフード店の店員もホールでコーヒーのミルクや砂糖を入れて混ぜてあげた方が良いですか?

それぞれにとって目指すものが違う限り、ある店では正解である事が必ずしも他の店でも正解である、と言う事はないんです。

がんこなおっさんがタキシード着て、カウンター越しに料理出してきて、ずーっとおしゃべりしてる店なんて誰も行かないでしょうw

軸がぶれるとこうなるわけです。

極端な例を出したので「そんくらいアホでもわかる!」となりますが、

例えばウチのお店。

あえて実名出しますが(良く比較されるのでw)

鳥貴族

鳥良

世界の山ちゃん

とひごの屋を比較した場合。

ウチはネギマのサイズを大きくした方が良いでしょうか。

店内を暗くして、ジャズを流し、イスはソファに。オシャレな雰囲気を出した方がよいでしょうか。

お皿に大胆に手羽先を山積みにして提供した方がよいでしょうか。

なんていう比較になると「うーん」となるわけです。

結論から言うと、どれもやるつもりはないのですが。

でもふっと鳥良さんに伺うと、ゆったりしたオシャレなイスに間接照明。ジャズが流れていて「いいよなーこの雰囲気!」なんてなるわけです。

とかくウチは古いお店です。キレイでオシャレな店ばかりの立地にありますし、

「となりの芝は濃く見える」のです。

ふっとまねしたくなりますが、これはウチがお客さん達に求められている事なのか、と自問自答して我に返るわけです。

さっき挙げたお店はどれも素晴らしいお店です。

学ぶべき店はたくさんあります。でもそれは、お店を構成する、あらゆる要素。

それらの断片であるべきだと思うのです。

その辺を意識しないでいると自店とはベクトルが違うお店なのにそれを忘れ、

あるお店で流行っている接客をまねてみたり、ユニフォームを替えてみたり、内装をムダにオシャレにしてみたり、なんていう間違った選択をしてしまうんだと思います。

もう一度書きますが「となりの芝は濃く見える」ので。

隣と自分の家は違うのに。

例えば僕が鳥良さんに伺ったときに素晴らしいなーと感じたのは、気になる商品があったのでそれらばかりを注文したとき。

スタッフの女性が「ご注文頂いたお料理は時間がかかるものばかりなので、もし良かったらすぐにお出しできるお料理はいかがですか?」と案内してくれたんですね。

その口調やトーン。

決して追加オーダーを取ろうと言う営業トークではなく、親切心で言ってくれていると言う印象を受けました。

同業であり、ある意味スレた僕らも(笑)素直に「じゃあこのお漬け物貰おうかな」なんてオーダーさせて貰いました。

実際は鳥良さんの指導の賜物で、追加オーダーを促進するためのテクニックなのかも知れません。

でも僕が店に持ち帰りたいと思ったのはそう言うマニュアル化ではなく(実際の鳥良さんの方針はさておき。ってか知らないので)、スタッフみんながお客さんの事を考えている、と言う事がお客さんに伝わるのは良い事だなーと言う部分です。

照明を落とすつもりもないしソファの導入予定もありませんが、スタッフのホスピタリティを表に出す、と言う部分は持ち帰りたいなーと思いました。

もちろんウチらしい味付けをした上で。

逆も然りで。

例えばウチのお店では人数と比較してご注文頂いたお料理が多すぎるな、とスタッフが感じた場合「ちょっと多すぎるかも知れません。追加は自由なので初回の注文は少し少なめにしてみてはどうでしょう?」と声をかける事があります。

「大丈夫だ」と言われた場合でも、あるところでお料理を作るのをストップし、「あとこれくらいご注文貰っていますがまだ作っていません。食べられそうですか?ムリならキャンセルしましょうか?」と。

良くこの話をすると「ええ?!自分から売上を下げるの?普通追加オーダー取れって指導するのに」と言われるのですが、僕らにとって、過剰なオーダーで値段が上がり「この店は高い」とレッテルを貼られるのがイヤなんです。

大量に料理が余った事なんて、そういうときはアタマから抜けてしまっていますからね。財布から消えたお金だけで判断されてしまうと思うんです。

このやり方、ウチは随分と前からやっていますが、これをやっていないお店をダメなお店だとは少しも思いません。

ウチに取っては必須なんですが、あらゆる業態。あらゆるお店がそうあるべきだとは思っていません。

一つ一つ挙げていけばキリがありませんが、そう言う事の積み重ねでお店は出来上がっていると思うのです。

立地、看板、店内、接客、ユニフォーム、メニュー、テーブル、イス、照明、接客、料理、、、、等々。

無数の要素が一つになってそのお店であり、もはや指紋の様なもので同じゴールを目指し、同じ事をすべきお店なんて一つもないと思うのです。

だから他のお店に行ってみて「これは凄いな!」とか「これ酷くね?」と思った場合、まずは自分のお店にとってはどうか、と考えた上でお手本にすべく持ち帰るなり、反面教師として持ち帰るなりするだけです。

もちろん多くの飲食店において「出来ているべき」(と一般的には思われている)、最低限出来ているべき事、みたいなものもあるので一概には言えませんが。

全てを踏まえ、あるお店のあらゆる要素。

それらが自分にとって受け入れられるものならそのお店はその人にとってオススメのお店になるのだろうし、逆ならもう二度と来ない店になるわけです。

お客さん達の感じ方が「前者>後者」となっているお店が生き残っているのだと思います。

自分たちが目指すものが正解かどうかなんてことはわかりません。

でも自分の店がこんなお店でありたいなーって言うのはきっと全てのお店が持っていて、それを人事て邁進してるんだと思います。

自分たちの軸をぶらすことなくこつこつやっていきたいなーと思った次第でござります♪