飲食店をやってます。

美味いモノ作って売ってりゃ客は来るし儲かる。そんな時代はとっくにおわりました。お店を運営していく中で思っている事を書いています。たまに全然関係ない事も書きます。笑

牛丼戦争に思う事。



牛丼3社の戦争の歴史は随分と長い。

つい先日も並盛りの価格が下がった。
それほど牛丼を頻繁に食べる方では無いのであまり分からないけど他の商品の価格はどうなっているんだろう。

並盛りだけがどんどん下がっているのかな?
その辺は正直わからない。

先日すき家に行って分かったのは、並盛りベースで考えると
ノーマルな牛丼以外の、お店の代表的な商品である、ネギ玉牛丼、白髪ネギ牛丼、山かけ牛丼、キムチ牛丼などなどは、牛丼の価格+100円。
牛丼並盛りが280円でその他は380円。

すき家うまいなぁと思う。
この「うまい」は、
「美味い」じゃなくて
「巧い」。
テクニカル、と言う意味。

仮に牛丼並盛りの原価が100円だとして。
売価が280円だから
原価率は約36%。
粗利は180円。
実際はもっと低いと思うけど。

そしてそれ以外のメニューのトッピング。
青ネギやキムチ、白髪ネギは、恐らく10円〜20円くらいじゃないだろうか。
そうするとそれらのメニューの原価は120円。
売価が380円だから
原価率は32%。
粗利は260円。

一人の客単価が単純に100円上がり、原価率が4%変わる。
これは勝手に仮定した数字なので実際の原価率の変動はどれくらいか分からないけれど、客単価が変わることは事実だし、原価率もノーマルな牛丼だけに比べれば確実に良くなっているはず。

お新香やお味噌汁のセットなんかも基本的な考え方は同じ。
以下にノーマルな牛丼だけで帰さないか、がポイント。

牛丼のお店である以上、それ以外はほとんど注文がないはず。
(カレーとかまあ色々あるけれど、メインの食事以外は頼まないという意味)
回転率勝負なのだから、客単価が100円上がると言うのは衝撃的なレベル。
毎日の動員客数がどれほどか分からないけれど、
1000人来るとして、全員がノーマルな牛丼だけだとすると。
単価280円だと売上は280,000円。

ところがその内のが玉子かお新香(各50円)のどちらかを注文すると、
プラス25,000円

7割がノーマルな牛丼以外の商品にすると、
プラス70,000円

両方で95,000円

ノーマルにひたすら牛丼だけだった場合と比較すると
月間30日営業で285万円の差が付く。
年間で3420万円。
これが1店舗あたりの金額。
2013年現在で約1900店あるようなので、650億円。
玉子やお新香、白髪ネギや山かけを推奨するかどうかでこんな金額になる。
もちろん1日あたりの客数も、玉子を注文する比率も、ノーマルな牛丼を注文する比率も全部勝手に仮定したものなので実際はどれくらいなのかはわからないし、

これは「全員がノーマルな牛丼で玉子も味噌汁も一切注文せず、280円で帰る場合」
との比較なので非現実的な数字なのだけれど、周辺商品を売る事、ノーマルな牛丼以外を必至で開発し、推奨する理由はわかる。

ノーマルな牛丼とそれ以外のメニューの比率がどれくらいなのかは分からないけれど、
1対沢山だし、結構比率は高いんじゃないだろうか。
並盛りの値下げに釣られて店に入ったはいいけど、メニューをみたらネギ玉牛丼を食べたくなって、、、なんて人も少なくない気がする。

androidiPhoneに近い感じというか。
アップル1社が出しているiPhoneと、その他のメーカーがみんなで作っているandroid
みたいな構図。

これを「トッピング」という形にしていないのがまた巧い。
別の商品としてラインナップする事で、
メニューのイメージが全然変わる。
メニューの種類が多くなることでノーマルな牛丼はその中の一つになり、
必然的に露出も小さくなる。

さっき書いた様な心変わりもしやすくなる、というもの。

ダマしているような書き方になってしまっているけれど、
お客さんの満足度が下がるような話ではないのだから全く問題無いと思う。

お客さんも喜んで、利益も上がる。
そう言う形になるようにしている、と言うだけ。

それに対して吉野家は、基本的にはノーマルのみでの勝負。
ネギ玉等の丼モノ周辺商品は豚、鳥を合わせても5品らしい(2013年現在)。

吉野家ブランドのイメージからしても吉野家に行ったらノーマルな牛丼の比率が圧倒的に高いことは想像できる。
もちろん玉子、お新香、お味噌汁等は吉野家も用意しているので先述の様な劇的な差ではないだろうけど、いわゆる「牛丼」と周辺商品との比率の差は客単価に直結するわけで、厳しい勝負なんじゃないか、と想像する。

繰り返すけれど、上に書いた数字はほとんどが勝手に仮定したものででたらめ。
さらにミニ丼から大盛り特盛りなどなどもあるわけでこんなにシンプルな話じゃないのだけれど、広報的に大々的に取り上げていて、ニュースにもなる並盛り牛丼の値下げを
フックにお店に呼んではいるが、実は売るべき商品、実際に勝負している商品はそれ以外の商品である、と言う事には変わらない。

個人的には吉野家が好きなので頑張って欲しいのだけれど。