スポットライト
スポットライトは、見せたいものをよりよく見せるためのものであると同時に、
見せたくないものを見せないためのものでもある。
光が強ければ強いほど、スポットライトが当たっていない所は暗く、見えなくなっていく。
飲食店の店作りにも様々な意味で「スポットライト」が使われている。
もちろん本来の意味である照明。
店内を薄暗くし、雰囲気を出す事と同時に見せたいものがより鮮やかに、明確に見せることが出来、店の隅の方など、汚れていたり古くなっている部分を隠せたりする。
これは実は無形のものにも使われている。
例えば、とてもインパクトのある商品を作り込み、「この店といえばコレ!」と言うイメージを持って貰う。
店の商品の基幹商品の1つを思い切り安くし、その商品をアピールしまくる。
こんな事をすることで、アピールしていない商品はとたんに印象が薄くなる。
こう書くとあまり良くないことの様に思えるけれど、実はそうでもない。
そのインパクトの元になる商品にはお金をかけていてあまり利益が出ない事が多くとも、それ以外の商品でしっかりと利益を取ることが出来るのだ。
その商品にはお金をかけているのでネガティブなイメージも付きにくい。
例えばマックが一番のお手本かも知れない。
100円マックをはじめとした低価格帯の商品と、手の込んだ高額商品をバランス良く宣伝告知することで、安い、と言うイメージと美味しい、と言うイメージをしっかりと植え付けてくる。
実際来店すると、驚くほど低価格帯のメニューは注文しにくくなっている。
大々的にポスターなどが貼られているのは高額商品ばかり。
メニューを探してもかなりしっかり探さないと低価格帯の商品は見つからない。
大々的に告知された、高額帯の商品はとても美味しいそうに見えるし、気づくと高額帯の商品を食べたくなってきていて、注文する。
鳥○族も非常にテクニカルだなーと感じる。
このお店の看板は280円均一というスタイルと、大きな鶏もも肉の焼き鳥。
行った事がない人ですら、店の事を知っていればこの2つのウチのどちらかを口に出すんじゃないだろうか。
それ以外の商品はお世辞にも良い商品とは言いがたいものが多い。
でも280円という価格と主役の焼き鳥がでかくて美味い、と言うイメージがそれらのネガティブなイメージを覆い隠し、「大して料理は美味くない」なんて評価する人は意外なほど少ない。
スポットライトであえて見えない部分を作り、そこでしっかりと利益を出している。
きっとこう言う思考は必要なんだろう。
もちろん商品の質を落とすとか、周辺商品でぼったくろう、なんていう浅い意味ではなく。
本当に売りたいモノをしっかりと見極め、本気でそれにスポットライトを当てていく。
これが売れれば良いなぁ、と言うぬるい感覚ではなく、あらゆる手段を使って売れるようにしていく。
でも、これって同時に売れないものを作っていく事になるんですよね。
皆が同じモノを食べれば、それ以外のモノは売れなくなる。
お客さん達が食べる事が出来るボリュームには限界があるわけですから。
それがウチのような小さい飲食店にはつらいのです。
どの商品も売れて欲しい。全ての商品が、自分たちで作った子供のようなもんですから。
でもやっぱりウチのお店に来たら、何を食べて欲しいのか。
ちゃんとメッセージにしなければならないんだろうな、と。凄く思います。